*Aria ProⅡ ST-500 “生き残った” 私の初めての1本

私が最初のギター選びに有利だったのは、雑誌のAD(広告)やカタログという一方通行的な情報だけではなく、先輩や友人からのアドバイスや情報、また実際にギターを貸してもらった経験から、当時の中学生としてはかなり自分に合った良いものが選べるほどの、目利きになっていたことでした。もっとも今をもってすれば稚拙な限りですが…(笑)

Aria ProⅡ ST-500 TB 1977年形

 

<仕様>

ネック:メイプルワンピース

指板 :メイプル 21フレット

スケール:25 1/2 インチ

ジョイント:デタッチャブル

ボディ:アルダー単板

ピックアップ:Aria ProⅡ SP-Ⅱ ×3

スイッチ:3 Way

コントロール:1 Volume 2 Tone

ペグ :Aria ProⅡ ML-25C

ブリッジ:Aria ProⅡ BS-50C

ストリングピッチ:11.3mm

ハードウェア:クローム(ビスを除く)

カラー:N S TB AR OW

カタログ掲載期間:1977~1978

最期の選択肢に残ったのが、Greco SE-500 と、この Aria ProⅡ ST-500 でした。

定価 5万円どうしの戦いですね。私の補助金なしの予算では、上限だったグレードです。

そこから楽器屋さん通いが始まります。試奏に次ぐ試奏。あの時の楽器屋さん、いつ行っても快く(本当かな?)試奏に付き合ってくれてありがとう。でも正直、甲乙つけ難く、なかなか決めることができなかったのでした。→ 確か夏休みから暮れまでかかったっけ…


決めない限りギターは自分のものにならない。最終的には「規格」で決めました。

コピーした年代やカラーバリエーションのちがいより、絃間隔のピッチが Fender を踏襲した 11.3mm か、当時の国産の標準であったテンピッチ(10.5mm)であったかを、決め手にしてしまったのです。全然子供らしくないでしょう(笑)。

結果、オリジナルどおりのピッチという理由で Aria ProⅡ ST-500 を買いました。

自分のものにしてからのチェックでも、とても良く作られたギターであることがわかり、大きな満足感を得てとても幸せでした。練習に励んだのも言うまでもありません。

でも思いっきり手の小さかった私には、オリジナルどおりのピッチは広すぎて、その後ずっと奏法的な苦労を味わうのでした。買ってから分かることって結構ありますよね。

でも3年後にどうしても欲しくなり、Greco SE-600 も中古で買ってしまった私でした。


この ST-500 は、1977年当時としては50年代のストラトのイメージを良く捉えてはいましたが、ペグが F-Key(のコピー)だったりトレモロユニットがダイキャスト製だったりと、ハードウェア的には70年代の仕様で作られていることが、徐々に分かってきました。

そこへ翌78年に、東海楽器からオールドストラトの完全コピーを打ち出した STシリーズがリリースされたことに、私は大きな衝撃を受けたのです。早まったか?とね…

 

早速カタログを入手すると、何と各パーツの分売が行われているではありませんか!

こうしてバイトの金で少しずつ、今でいう ST-500 のモデファイが始まったのでした。

最初に着手したのはペグからで、東海製のST-DN を購入。写真のとおりピッチはぴったりで、ペグ穴の開け直し等の大改造はせずに済んだことは幸いでした。

しかし小さなところでは、ヘッドに当たる面に位置決めのピンが出ており、その穴開けが必要だったりと、加工も必要でした。

余談ですが、Aria ProⅡのロゴには通常金色の縁取りがあるのですが、このギターにはありません。これはライブで予備のピックを両面テープで貼り付けた際、剥がした時に金縁の部分がトップコートごと剥げてしまったためです。

次なるは、ピックガードとコントロール周りから。当初はスイッチ、シールドプレートなど全て東海製のパーツで揃えました。

交換はペグほど簡単ではなく、ネジ穴の位置が全てちがうため、元のネジ穴を埋めてから新たに開け直したり、スイッチの位置が元のキャビティと微妙に合わなかったりと、木部の加工がつきまといました。

ちなみにスイッチやポットは何度も交換しているため、当時のものではありません。

しかしノブや PU はオリジナルの部品なので、樹脂が変色(黄ばんで)してヴィンテージギターさながらの、凄い貫禄です。

PU は、DiMarzio FS-1 や Bill Lawrence

L-250等の様々な交換遍歴がありますが、

引退を決めたときに元に戻してあります。

オリジナル PU を手放さないで良かった…

ブリッジ&トレモロユニットは、フェルナンデス・リバイバルシリーズのものです。

何故ここには東海製を採用しなかったかというと、少年も少しずつオールドのスペックに詳しくなりかけたことにより、ダイキャスト一体成型の東海製トレモロユニットにはチト抵抗があった※。というか、それなら元から付いていた部品と変らなかったというのが、大きな理由です。プレス成型のブリッジサドルだけ交換すれば良かったのですから。

 ※オリジナルは、サドルプレートとイナーシャブロックがセパレートになっている。


そこへ渡りに船というか、たまたま覗いた楽器店のジャンクパーツコーナーに、アーム折れのフェルナンデス・リバイバルシリーズのトレモロユニットが何と 2,000円で出ていたのをゲット。イナーシャ内の折れたアーム根を執念で摘出し、見事装着と相成りました。

ラッキーなことに、ネジ穴のピッチもドンズバでフィット(ラテン語みたい…笑)。

これで主だったパーツはいっぱしのオールド仕様となって、その数年後に Fender Japan が発足するまでのわずかな期間ではありましたが、当時の少年はご満悦だったのでした。

細かいところでは、配線やコンデンサには当時からこだわっていたので、全て交換してあります。それから、東海製シールドプレート(ブラス製)の酸化による接触不良には、たびたび泣かされました。何回か外して“酸洗い”を実施しましたが、無垢のブラスである限り、メッキでもしないと酸化は止められません。ポットケースへのアースのはんだ付けを防ぐという発想は、とても良いのですけれどねぇ。最終的には、菊座ワッシャを併用してがっちり固定するという方法が、最も効果的だという結論に達しはしましたが…

古いカタログを整理していたら、購入時の保証書やタグ類がまとまって出てきました。

ポリ袋に入って密閉されていたため、黄ばみ等も一切なく、まるで買ったばかりのようなコンディションには、私自身が驚いてしまいました。ご愛用者カード(葉書)がここにあるということは、未投函で至ってしまったということなので、寂しいことにマツモク工業に少年の名は登録されなかったのですね。5桁の郵便番号や切手の額面が懐かしいです。

純粋だった少年は、パーツだけではなく、Aria ProⅡのオリジナルハードケースまでも、バイトして揃えたのでした。今思うと“これじゃなきゃならない”というほどの必須アイテムとは思えないのですが、あの当時、何故かそれは必然の存在と信じていたのでしょう。

結果的に、ギターの保管と記念品的な付加価値を高めることに多大な貢献をしています。

*ST-500 “実験&改造”  試行錯誤といじり倒しの回想録

前文でも触れましたが、使い始めから経験と技量が上るに伴っていろいろ不満な箇所が出始めたことで改造に手を染めて、悪い道に入ることになってしまいました(苦笑)。

でも大切な一本でもあったので、当時の未熟な頭で熟慮してあまり無謀な改造にはまらなかったのが、原形をそれほど損なわずに済んだ要因です。今にしてみればですが。

当時はライブ等にこれの出番が多く、実用面でかなり試行錯誤した覚えがあります。

順不同になると思いますが、つらつらと思い出しながら書いてみます。

1.PUセレクタースイッチの変遷

  当初はピックガードアセンブリに対応して、東海製の 3way だけど 5way 的に使える

  スイッチを購入しました。つまり 5way ほどハーフトーンの位置ではっきりクリック

  は無いけれど止まるようにできているという、過渡期ならではの製品ですね。

  確かに装着して初めてこのギターからハーフトーンが出たときはさすがに感動しまし

  たが、やはりライブでの操作性に難あり(確実感が足りない)で同形の 5way に交換

  されました。操作性はそれで改善されたのですが、今度はスイッチ上部の隙間からの

  ゴミやほこりで接触不良に悩まされるようになり、密閉形の VLX シリーズに落ち着き

  ました。これはやや難しいのですが、内部を開けて接点を清掃できる点を評価して

  います。CRL製インチ規格のスイッチについては、このギターでは試していません。

  ※後年 USA Fender を入手した際、そちらでの交換に CRLや OAK を使用しました。

2.PUやワイヤリングの変遷

  当初はスイッチを 5way にしたことでオリジナルのPU(SP-Ⅱ×3)でも不満は感じ

  なかったのですが、ストラトのオリジナル仕様とはいえリアPUにトーンが効かないの

  は私にとって使い勝手が悪かったため、ミドルPU用トーンポットに結線してリアPU

  にもトーンを効くようにして改善しました。

  次に気になったのはリアPUのパワー不足で、これは同形のPUを3個使用している以上

  仕方ないのですが、リアPUの音量にフロントとミドルを合わせるとどうにも感度不足

  に陥って、ほとほと困りました。またリアポジション特有のキンキンしたサウンドも

  私の好みでは無かったので、思い切ってPU交換となりました。選んだのは当時のリプ

  レイスメントPUではこれしかないと言える「DiMarzio Fat-strat(後のFS-1)」で、

  懐は寒くなりましたがサウンドはホットになって大満足でした。なにより前述のキン

  キン感は抑えられ、ハムバッカー寄りのファットな音が得られたことは、PUでこんな

  にも変わるものかと驚かされたものです。このとき、リアとミドルのトーンポットを

  共有するのを止めてリアPU専用とし、フロントとミドルのポットを共有としました。

  更に続きますが、このときリアとミドルをハーフトーンにするとノイズが激減する現

  象を発見。つまり SP-Ⅱと Fatstrat はリバースの関係(ハムキャンセル効果)にあっ

  たわけで、これは予期しない収穫でした。そこで更に考えてスイッチ付ポットに交換

  し、 SP-Ⅱと Fatstrat をシリーズ(直列)にできるようにしました。このハムバッカ

  -的サウンドはかなりヘビーな隠し技にできて、かつ使えるサウンドでしたよ。

3.コンデンサの交換

  これは上記のワイヤリングと関係するのですが、フロント+ミドルとリア用のポット

  に付けるコンデンサを分けて(通常は1個で共用)、効きを変えてみました。

  フロント+ミドルがオリジナルの 0.047μF。リア用がヴィンテージに使われた 0.1μF

  で、当然ですが 0.1μFの方が効きが強く、トーンを全開にしても若干コンデンサの影

  響を受けてしまいますが、それが狙いで私の好まないリアのキンキン感を少しでも封

  じる手立てとも言いましょうか。この値の組み合わせは以後他のギターにも採用する

  ことになり、私の中では成功したチューニングのひとつになりました。

  使用したコンデンサは一般的なフィルム(マイラ)で、当時はオイルやオレンジドロ

  ップ(フィルム)等が流行る前で、もっぱら値の変化でカスタマイズしていました。

4.出力ジャックの交換

  これはよく言われるようにジャックの消耗品としての見地と、プラグとの篏合(かん

  ごう:かみ合わせ)の両方で検討する必要がありますね。私は定評の Switchcraft も

  もちろん使用しますが、篏合の具合が気に入れば国産やアジア製のチープなジャック

  も、ためらわずに使用します。→ シンプル形ジャックを使う ご参照ください。

5.ナットの交換

  思い出すに、最も早く交換した部品はナットだったかもしれません。

  購入して2箇月目くらいには不調を感じたので、元からのナットはハズレだったのでし

  ょうか? 消耗やゲージの変更に伴って何回か交換しています。ブラスや TUSQ など

  試しましたが、今は牛骨製に落ち着いています。